28日ニホンカワウソが絶滅種に指定された。地球上には、絶滅が危惧される生き物が2万種近くいるとされている。ひとつの種は、他の様々な種とのつながりにより成り立っていて、そのバランスが崩れることは生態系全体を崩してしまうおそれがある。そこが種を守る必要があるといわれる所以だそうだ。それらは何らかの手だてをしなければ、永遠に地球上から消えてなくなってしまうかもしれない。
世の中には守るべきものは、生き物以外にもたくさんある。文化芸術分野でもそうだ。今大阪では文楽がその危機に貧している。橋下大阪市長が文楽協会への補助金の削減方針を表明したことで協会が反発し話し合いさえも拒否しているという。
橋下市長は「大衆に支えられてなんぼ」と述べ、その不人気さに注文をつけている。税金を使うのだから多くの人に理解されるべきだが、その不人気と文化保護法で指定された無形文化財を同じ土俵で論じるべきなのだろうか。橋下氏は公開の場での意見交換を希望しているというが、劇場型政治の典型である「事業仕分け」を思い出す。大衆の前での“つるし上げ”、そこには思いやりも、文化を守る視点の欠片もないだろうことは容易に想像がつく。
産経新聞のコラムでは「自国の古典も伝統芸能もきちんと保てず、文化的属国になった国が、主権や領土を守ったとしても、自立していると言えるか」と橋下市長に対して本当の保守ではないと断じている。橋下氏の改革手法は、「打倒抵抗勢力」の構図で人気を得た小泉元総理と似ている。大衆に支持された小泉政権は何を残したか。規制緩和と市場原理主義導入による格差拡大、そして地方の切り捨てが行われた。今「大阪都構想」を提案するのは格差社会の“勝ち組”である大都市大阪だ。その“大きな声”が大衆を動かし、マスコミもそして既成政党までもが翻弄されている。そんなリーダーと「浮気な大衆」に危なさを感じるのは私だけではないと思うのだが…
藤沢すみお