障害者自立支援法が先の特別国会で成立し、平成18年4月より施行されることとなりました。この法律は精神障害も含め、福祉サービスを統合し、実施主体を市町村に一元化すること、保護から自立支援へ転換すること、持続可能な制度とすることなど、障害福祉の制度全般にわたる見直しが盛り込まれています。
ところが法案が成立したものの、依然として、障害のある方々からの不安の声があるのも事実です。そこで、この度私が行った予算特別委員会での質問の内容をご紹介し、説明をしたいと思います。
(1)市町村の責務について
- 新たな制度では、市町村の役割が重要になると思われるが、具体的にはどのようなことが市町村の責務となるのか。
- (答え)福祉サービスの実施主体を市町村に一元化し、障害程度区分の認定やサービス量の支給決定を行うことに伴い、障害福祉計画を策定し利用者のニーズに基づくサービスを、計画的に確保することが義務づけられました。
(2)審査会の果たす役割について
- 障害程度区分を認定するにあたり市町村は審査会の意見を聞くこととされているが、障害のある方々が必要とする支援を正しく把握できるかという不安もある。この審査会の果たす役割はどのようなものか。
- (答え)まず、全国一律の調査項目による一次判定を行い、さらに、障害の重い方が介護給付のサービスを希望する場合には、有識者などで構成される審査会による二次判定を経て、決定することになります。二次判定においては、医師の意見書なども参考として一人一人の心身の状態を反映した判定を行うこととされています。さらに、介護給付のサービスの種類や必要量の決定にあたっても、その内容が合理性・公正性を有しているかどうかについて、審査会の意見を聞くこととされています。
(3)障害程度区分について
- 障害程度区分の検討にあたり、試行事業を実施したとのことだが、試行事業を通じて課題とその対策についてはどのように考えているか。
- (答え)障害程度区分について96%の方が、サービスの対象となる要支援以上の判定となされたものの、各障害の介護度が的確に反映できず、二次判定で変更した割合が約50%もあったことから、調査項目の見直しが検討されているところです。また、審査会の運営にあたり、適切な審査を行う為の情報が不足していたという意見があったことから、本格実施の前に課題や問題を検証することが必要であり、本年度中に、全市町村において、この試行事業が実施できるように必要な経費を補正予算として計上しているところです。
(4)サービス利用の現状について
- 平成15年の支援費制度の導入により、サービスの利用者は大幅に増加したことと思うが、まだサービスを利用されていない方も、新にサービスを利用する為には、利用できるだけのサービスが地域にあることが前提となるが、現状はどのようになっているのか。
- (答え)ホームヘルプサービスでは、支援費制度導入時と比べると、身体障害者で1.3倍、知的障害者で3.4倍、障害児で約4.9倍と大幅に伸びている。しかし、未だに支援費制度の利用者がいない市町村が相当数となっている。さらに、作業や訓練を行う知的障害更正施設や授産施設、あるいは地域共同作業所といった何らかの障害福祉施設が全くない市町村が72カ所もあり、サービスの地域間格差の解消が求められています。
(5)サービスの地域間格差について
- 地域間格差をどのようにして解消していくのか。
- (答え)現行の支援費制度においては、支給決定に関する客観的な基準がなく、市町村の判断に任されていることなどから、地域間格差が生じていると考えます。今後は障害者自立支援法により、
- 障害程度区分の認定やサービスの支給決定に、全国共通の基準が設けられること
- 市町村に、サービスの種類ごとに必要な量の見込みを盛り込んだ障害福祉計画の策定が義務づけられたこと
- 通所施設において、NPO法人でも設置できることやサービスの提供場所等で規制緩和がはかられたこと
- 在宅サービスについても施設サービス同様に、国、都道府県の費用負担が義務化されたこと
などにより、障害のある方々のニーズに応じ、計画的に福祉サービスの基盤整備が進められるものと考えています。
(6)市町村障害福祉計画について
- 障害のある方々に必要なサービスを提供するため、市町村が障害福祉計画を策定することが義務づけられたが、この計画を達成するにあたり、道としての支援はどのように行うのか。
- (答え)道府県も障害福祉計画を策定することが義務づけられたことから、全道全体の障害福祉サービス等の必要量とその確保方策、障害福祉サービスや相談支援に従事する人材確保などを内容とする計画を策定し、市町村の施策推進を支援する予定。
(7)障害福祉計画への関係者の意見について
- 道や市町村が障害福祉計画を策定するにあたっては、障害のある方々や関係者の意見などが反映されることが重要と考えるが、道としてどのように取り組むのか。
- (答え)計画の策定にあたっては
- 障害のある方々を初めとする、地域住民の意見を反映すること
- 地方障害者施策推進協議会の識者の意見を聞くこと
とされています。道として、障害のある方々をはじめ、幅広く関係者との意見交換の機会を設けるなどして道民の方々の意見を適切に反映した実行ある計画を策定したいと考えています。
(8)就労支援について
- この法の目指すべき柱のひとつが就労支援でもあるが、新たな制度では、就労に関し、どのような取り組みが行われるのか。
- (答え)これまでも取り組みを行ってきたが、障害者への個別の支援が必ずしも充分でなかったこと、さらに福祉と雇用の関係機関の連携が弱いことが反省として上げられます。
一人一人の希望を踏まえた上で、その能力や適正に応じた個別の支援を行えるよう既存の施設の機能や事業を見直し、一般就労に向けた訓練などを行う「就労移行支援」や一般就労が困難な方々に就労の場を提供する「就労継続支援」といった新たな事業に再編されることとなりました。
また、ハローワークが福祉施設等と連携して、障害のある方々の企業等への就労支援を強化する事業も創設されたことから、障害のある方々一人一人の状況に応じた就労支援に取り組んでまいります。
(9)就労の確保について
- 厳しい雇用環境の中、障害のある方々の就労を確保するためには、道としても、積極的に支援するための独自の取り組みが必要と考えるが、どのように取り組むのか。
- (答え)今年度から知的障害の方々への生活援助を行うセンターなどに新に就労支援の専任職員を配置し、雇用と福祉が連携し、生活面に加え就労面での支援機能を強化した「就業・生活センター」への移行に向けた取り組みを行っているところ。
また、地域における福祉的就労の受け皿となっている地域共同作業所については、障害者自立支援法における新たな事業体系に移行することにより、就労移行や就労継続支援といった安定的な運営を確保し、利用者に対し、より適切な就労支援が図られることから、早期に移行できるよう、法人設立に向けた支援などを行っているところです。
(10)市町村に対する支援について
- 障害のある方々の生活を地域で支えるためには、もちろん市町村の役割は重要であるが、市町村任せでは、この大きな改革を乗り切ることはできない。道として、十分市町村を支援していく必要があると考えるが、見解を伺う。
- (答え)障害者施策の推進は、住民にもっとも身近な市町村を中心として、総合的に取り組むことが重要と考える。その為に、障害者自立支援法においては福祉サービスの実施主体を市町村へ一元化するとともに、市町村障害福祉計画の策定が義務づけられるなど、市町村の果たす役割はますます大きくなったところ。
- 道としては、認定調査員等の研修や審査会の試行事業を行い、町村が適切に障害程度区分の判断やサービスの支給決定ができるよう支援しているとことです。
また、施行後に置いても、障害福祉計画の策定を通じ、市町村がサービス基盤の確保に向け取り組む、各種施策の確実な推進を支援するなど、障害のある方々が、道内どこにいても自立した生活が実現できるよう、今後も積極的に取り組んでまいります。
(11)利用者の手続きについて
- 福祉サービスを利用される方々は、今後いつまでに、どのような手続きが必要となりますか。
- (答え)身体や知的障害のかたは、3月までに、世帯や所得の状況に応じた新たな利用者負担の額を決定するための申請を市町村に行うことが必要となります。
また、精神障害の方で在宅サービスを利用される場合は、利用者負担額と障害程度区分の認定も必要となります。さらに、10月以降、在宅サービスを利用されるすべての方は、市町村から、障害程度区分の認定と新たな福祉サービスの支給決定を受けることになります。なお、現在サービスを受けられている方は、来年4月から9月の間に申請をすればよいことになっています。
(12)窓口対応について
- 障害のある方々がその手続きを円滑に行うためには、市町村の窓口における適切な対応が必要だと考える。例えば、知的障害のある方々に制度の仕組みやサービスの受け方などを十分に理解してもらうこと、目や耳の不自由な方々にも十分な配慮が必要ではないか、どのような対応を考えているか。
- (答え)それぞれの障害特性に応じた配慮が必要と考えています。利用者に対し必要な情報がもれなく周知されることが重要であり、必要な配慮に関して障害当事者や関係団体の皆様よりご意見やご要望をいただいています。また、市町村に対して適切な対応がなされるように要請してまいります。
(13)認定調査員等の確保について
- 障害程度区分の認定がサービスの基本となるため、認定調査員や審査委員会委員の役割はきわめて重要となりますが、どのような方を想定されているのか、また、各市町村でそのような方を確保することができるのか。
- (答え)認定調査員等の確保ができるように、道が実施している障害者ケアマネジメント研修の受講修了者をホームページで紹介しているほか、審査会の委員については、医師会等への適任者の協力依頼を行うと共に、障害当事者の方々を加えることが望ましいと、市町村に周知しているところです。今後とも認定調査員等の確保を支援してまいります。
(14)認定調査等の専門性について
- 調査員等の専門性を保つためにどのような仕組みが考えられているのか。
- (答え)国においては、調査や判定のためのマニュアルを作成し、事務の標準化が図られることとしている。道は認定調査員と審査会委員に対する研修制度を本年度中に実施する予定です。
(15)負担軽減の経過措置について
- 今回の法施行において、利用者の負担が増大することが、一番の関心事だと思う。国は負担軽減のための何らかの措置を講じるとしているが、具体的にどのような経過措置が執られようとしているのか。
- (答え)利用者負担は原則として、サービス量の1割負担とした上で、所得に応じた上限額を設定しています。例えば、入所施設やグループホーム利用者で、月額収入が6万6千円までなら負担を0とする。また、通所サービスや児童入所施設を利用する方で、市町村民税非課税世帯で年収80万円以下の方は、所得に応じた上限額1万5千円をさらに半分とするなどの減免措置があります。
(16)制度の周知について
- いろいろと経過措置が図られるとしても、基本的には利用者が申請をしなければならず、それには障害のある方々ご自身やご家族に周知されなければならない。制度の周知徹底のために、道としてどのように取り組むつもりか。
- (答え)すでに道内6圏域において市町村を対象とする説明会を開催してきたほか、関係する施設、あるいは親の会といった関係団体に対しても、制度周知に向けた協力を依頼しているところです。